2019年の夏に、付き合いの古いベーシストの小山功一さんが、ご自身の楽器の弦を羊腸弦に張り替えました。
20世紀の中ごろからはベースの弦は低コストで大量生産の効き、なおかつ品質の安定したナイロンやスチールを用いて作られたものを多くの演奏者が使うようになり、本来の羊腸弦のサウンドを我々が聴くことは難しい状況です。
音色は、もちろん違います。
正直、私もジャズを聴きはじめた学生時代に最初に抱いた疑問が『過去のジャズの名盤で聴けるミンガスやチェンバースの音色と、現在ライブハウスで聴くベーシストの音色は全く違うのはなぜか?』というものでした。
先の事情を知り、納得はしたのですが残念ながら羊腸弦の演奏者を聴く機会もなく時は流れた昨夏、小山さんが『生の』羊腸弦のサウンドを聴かせてくれたわけです。
そのサウンドはまさに『あの音色』でした。技術進歩(?)で安価や生産性を確保した代わりに失った音色でした。
『これを聴く機会が少ないのは勿体ないな』と思いました。
昨年末、サンテラスホールの喫茶室の活用法を模索しているというお話を聞いた時に、『あのベースを聴いてもらおう』と思いつきました。狭小なスペースは極力、アンプリファイドされない演奏を聴くのにもってこいです。で、自分のギターとのデュオ演奏でライブを行った次第です。
ご来場いただいた皆様に何かしら伝わったなら幸いです。大事なのは『経験』だと思います。
『経験』と言えば、現在(2020年5月)は我々人類が相当に厳しい状況を経験しています。この状況が去った後も考え方や生活様式、常識といったものが大きく変わる可能性だってある。もちろん、音楽の聴き方も…。
大人数で密集することが難しくなるなら、演奏の回数が制限されてくるようなら、ひょっとして『本来のサウンドへの回帰』もありうるかもしれません。というのは妄想が過ぎるか。
2020年5月 片桐秀樹
#stay信州 #stayhome #やってみよう長野
(Youtubeのエディターでサイズ変更したら、音と映像のずれが出てしまいました。)