第67回ピアノのゆふべ「Prayers in July」ピアノ 川口 直希

Presented by株式会社協立商会 第67回ピアノのゆふべ 

「Prayers in July」ピアノ 川口 直希

私が前回「ピアノのゆふべ」に出演させて頂いた直後、新型コロナウィルスの感染拡大により、世の中が大きく変わりました。私自身もたくさんの本番が中止になり、芸術の必要性が問われる中で、自信を失っていました。

 ‘withコロナ’によって少しずつ活動が出来るようになり、久しぶりにコンサートで演奏したとき、聴いてくれる温かいお客さんとその空間を共有することが何にも変えがたい喜びであることを知りました。また皆様と音楽を同じ空間で共有出来る日を楽しみにしております。

 この度は2曲録画させて頂きました。普段は絵画や書道作品などが飾られる展示室ですが、音がキラキラと絵具のように輝く音響空間で演奏できましたこと、大変嬉しく思っております。厳しい状況が一日でも早く快復するように、最大限祈りを込めて演奏したつもりです。たくさんの皆様にお楽しみ頂けましたら、幸いでございます。

 最後になりましたが、このような機会を下さり、当日も何から何までサポートを頂きました、Js文化フォーラムの皆様、サンテラスホールの皆様、全ての関係者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。


ピアノ 川口 直希 プロフィール

岡谷市出身。3歳よりピアノを始める。桐朋学園大学付属「子どものための音楽教室」長野教室を経て、現在桐朋学園大学3年
在学中。2014年、第29回長野県ピアノコンクール 中学生の部最優秀賞。2016年、第31回長野県ピアノコンクール 高校生の部
優秀賞。これまでにピアノを酒井啓子、甘利真希子、小山香織、山田えり子の各氏に師事。現在、ピアノを斎木隆、有森直樹、
作曲を鷹羽弘晃、指揮を吉田行地の各氏に師事。

演奏曲

ブラームス 6つの小品 作品118 2.間奏曲

「6つの小品」はブラームス最晩年の作品の一つ。これまで交響曲、協奏曲、室内楽作品や壮大なピアノ曲を書いたあと、作品118を含めて連続的に4つの小品集を書いています。なぜ連続的に小品を書いたのか。そのきっかけは「親しい友人の死」であったのではないかと推測されています。作品118の2曲目に置かれる間奏曲は、特に単独でも取り上げられることの多い作品で、かつての若かった自分を懐かしむような哀愁に満ちた旋律が心に残ります。祈りを最大限に込めて。

ラフマニノフ 絵画的練習曲「音の絵」作品39-8

実質的にラフマニノフがロシアで完成させた最後の作品である、「音の絵」作品39。この後の十月革命によって亡命したことでラフマニノフ自身がロシアの地を踏むことはありませんでした。「音楽による社会告発」とも言われるこの作品ですが、ロシアの置かれた不安な状況を表しているように思います。ラフマニノフはこの後アメリカに亡命し、たくさんの作品を世に送り続けました。8番目に置かれたこの曲は、選ばれた音たちが川や風のように、流れていくような作品であるように思います。まるで、心のなかの不安なざわめきの中に、一筋の光が射し込むように。

令和3年7月31日 撮影